風
スペースコロニーが完成したとき
天文学者の私はわりと簡単に移住することができた。
風は天体観測の邪魔をし細部を見えなくするので
大気の外に出るのが観測者の夢である。
スペースコロニーは素晴らしかった。
美しい公園のような町は広々としていて草花が咲いてる。
快適な気温と湿度の中で綺麗なあらゆる公共施設や店があって
小型の自動運転の電気自動車がゆっくりと走っている。
私はそれで天文台に向かう。
仕事も生活もすべてが素晴らしかった。
ところが一年過ぎたころ妻の彩香の元気がなくなりはじめ
私も何か大切なものが足りない気がするようになった。
私と妻は二か月の休暇をもらい地球に帰ることにした。
私たちは妻のふるさとで休暇を過ごすことになっていた。
季節は秋で吹く風はときに寒いほどに肌を刺激していく。
空には雲が流れ地上では秋の花や草や木の葉が揺れていて音がしている。
しばらくすると妻は元気を取り戻し私も何が足りないか気づいた。
スペースコロニーでは風が吹いてなかったのだ。
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